光明元年

雑感

戦争が始まった

昼休みに会社の会議室でコーヒーを飲んでいたら、先輩が「戦争が始まったよ」と言いながら入ってきた。

最近株を始めたというその人は、証券取引所の休み時間が明けたら軒並み株が下がっていた、その間に戦争が始まったんだね、という話をした。ショックは受けたがどういうことが起こっているのか実感があるわけでもなく、数分後には、積み立てNISAはやっといて損はないよ、やっぱそうですよねーなんて言っていた。

戦争が始まってもラジオは音楽を止めるわけでもなく、前から予定していた特集を変更するわけでもなく、粛々と普段通りのクソ呑気な放送を続けていた。それを聞いている私も同僚たちも仕事の手を止めるわけでもない。戦争が始まったというのに。たまにニュース速報で伝えられる空爆、上陸、ロケット攻撃、死傷者少なくとも8人、考えられる限り最悪の、この攻撃がもたらす死と破壊、などの断片的な単語が普段通りの放送、普段通りの一日を送ろうとする我々の嘘を暴いているようだった。

夜、家に帰ってNHKのニュースを見たらもっとひどい情報が映像がたくさん報じられていた。記録しておく。車や鉄道で西に向かおうとするウクライナの人々、車で埋め尽くされた道路や人が殺到する駅の映像、ビデオ通話で涙まじりに話すキエフに住む母親と日本に住む娘、明け方の爆撃、1日前に独立した(ロシアが一方的に独立を承認した)東部の地域から戦車がぞろぞろぞろぞろウクライナに向かっていく映像、数十人のロシア兵と数十人のウクライナ兵と、民間人の男の子がひとり死んだ。掲げている名目とおこなわれている行動の乖離。「軍事行動を開始する」ってなんて変な言葉なんだ。

会社の会議室で「戦争が始まったよ」と教えられた今日の光景を一生おぼえていることになるんだろうか。そうならないことを願う。